In my 高野豆腐 head

頭スカスカ人間による雑文置き場

スーパー銭湯と千と千尋の神隠し

 何故あれだけヒットしたのか、というのは各方面からいろいろ言われているが、自分は個人的にあの映画を見ると、1990年代後半から2000年代前半にかけて隆盛を誇ったスーパー銭湯の光景が思い浮かぶ。スーパー銭湯の隆盛と映画公開が重なったのがヒットの要因ではないかとさえ思っている。

 90年代前半まで銭湯というと、風呂なしのアパートに住んでいる人がしかたなく通う公衆浴場か、老人だらけのヘルスセンター的なものしか無かった。しかし90年代も終わりかけに、露天風呂や岩盤浴やサウナなども有り、食事も出来て、一杯飲めて、また風呂に入って、畳に寝っ転がって…と時間を潰せて、取ってつけたような和の雰囲気があり、そこそこ清潔なスーパー銭湯が国道沿いそこら中できた。あの湯けむり混じりの歓楽の光景は2000年前後の日本人の一つの共通の記憶だろう。それが千と千尋湯屋の光景と重なると思う(まあよく知られているように設定上湯屋は単なる風呂屋ではないのだが)。

 実際にスーパー銭湯の隆盛は2000年前後であったという。その後飲酒運転の厳罰化や管理不届による事故などの逆風が業界に吹き、徐々に衰退していく。しかしそれすらも現在のコロナ禍の前ではそよ風のようなものだっただろう。あの映画を見てまず今思うのは、「密だな」という実に悲しい感想である。映画の中に描かれている和洋中まぜこぜな雰囲気にレトロ感を覚えるのもあるが、湯けむり立ち込める閉空間で大勢が風呂に入り、のんびりと遊興していた20年ほど前のスーパー銭湯を思い出して、二重の意味で懐かしみがこみ上げてくる。

 

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